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GNP総額は3.5%ほどの成長をしてきた。この1人当たり所得のかなりの速度での増加、特にアジアでの非常に急速な増加は、発展途上諸国人々の主食である穀物の需要を大幅に増加させ、さらに特に中国を中心とするアジアでの動物性蛋白質需要の急速な増加が飼料穀物需要を爆発的に増加させた。
アジアにおける穀物需要の急増の実態と諸影響を中国について検討してみよう。世界の大国中国は90年に世界総人口の実に22%の人口を有し、将来の食料需給の帰趨を制する。58年から92年の期間に中国の人口は、国連の推計では、増加率は一人っ子政策もあって0.9%と他の発展途上諸国と比べてかなり低かったが、6.8億人から約12億人に急増し、2020年には15億人に達する。この人口急増は穀物の必要量を急増させる。戸別農家の農業経営意志決定を重視する改革開放政策は中国の穀物単収と穀物生産を急速に上昇させ、その結果中国の1人当たり穀物供給量は61年の230キロから95年の354キロヘと大幅に増加した。しかし人口爆発と上述した収穫面積と耕地の減少や穀物生産の増加率の低迷により、1人当たり穀物供給量は85年以降停滞し、穀物単収の年増加率の5カ年移動平均も80〜84年の期間には年率5%強で増加したがその後92年までは0.3〜3%の成長に鈍化した。この傾向は将来継続しよう。
中国の1人当たりGNPは80〜93年の期間年8.2%の超高度成長をし、92〜95年には10%程度と爆発的であった。この中国の高度成長は、中国が96年3月5日の全人代で2010年までの経済成長率を7〜8%と計画したことから、将来もかなりの期間維持されよう。この所得の最近の急増は、中国人の主要な消費食肉である豚肉を中心に食肉の需要を年率10%以上の早さで増加させ、豚肉1キロを生産するために4キロの飼料穀物が必要だから、飼料穀物需要を爆発させ、穀物価格を急騰させた。95年に1年でとうもろこしの価格が2倍に、国内自由市場米価は93年1月からから95年6月にかけて3.2倍に急騰し、94年5月からは中国の国内流通米とほぼ同質の砕米35%の下級タイ米の輸出価格よりも高くなっている。33)北京政府は94年11月に国内不足を緩和するためとうもろこし輸出を禁止し、95年4月からは大豆の輸出を禁止した。中国の穀類(大豆を含む)の輸出は図4が示すように94、95年はほぼゼロになり、純輸入が年1500万トン程度になっている。実は中国の穀物の大量純輸入はなにも最近年になって始まったものではなくて、FAOデータによれば同図が示すように85、86、92、93年を除いて77年

 

 

 

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